2016年3月18日金曜日

組み替えでオン! Turning on by recombination



Creリコンビナーゼと認識配列であるloxPを組み合わせたシステムは、条件依存的な遺伝子発現のコントロール系として現在の生命科学研究に欠かせないツールとなっています。


認識配列にはバリアントがあって、これをうまく組み合わせると「遺伝子をひっくり返してスイッチオンする」というシステムが作れます(DIO: Double-floxed inverted ORFとか、FLEX: Flip excisionと呼ばれます)。



バリアント1つだと、挟まれている配列は順方向と逆方向を行ったり来たりしますが、




2つ組み合わせると、入れ替わった後に固定されます。
(2021.1.16 lox配列の表記ミスについて指摘がありましたので差し替えました)

これを考えた人は本当に頭がいいと思います。。。

元文献をたどっていくと、[Schnütgen, Nat Biotech 2003] に行き着きました。ここではloxPlox511が使われています。
しかし、これだけ普及している系の提唱論文なのに、引用は149しかない!(Google scholar調べ)。なんとも過小評価気味な。

どうやら当初はあまり評価されず、あまり長い遺伝子を組み込めないアデノ随伴ウイルス(AAV)システムに実装する際に「再発見」されたという経緯のようです。2007-2008年頃にneuroscienceの大御所の先生方が使われています[Atasoy, J Neurosci 2008; Cardin, Nature 2009]。ここではloxPlox2722が使用され、並べ方が2通りあるようです(それぞれをDIO/FLEXと呼んでいるようですが、この辺の区別はよくわかりません。。)

シンプルさとエレガントさが同居していて、自分が好きな系の一つです。


Reference :
A directional strategy for monitoring Cre-mediated recombination at the cellular level in the mouse.
Schnütgen et al. Nature Biotechnology 21, 562-565, 2003.

A FLEX Switch Targets Channelrhodopsin-2 to Multiple Cell Types for Imaging and Long-Range Circuit Mapping.
Atasoy et al. The Journal of Neuroscience, 28, 7025–7030, 2008.

Driving fast-spiking cells induces gamma rhythm and controls sensory responses.
Cardin et al. Nature 459, 663–667, 2009.




2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初めまして。大学院で生物学を専攻している修士一年の者です。

某研究者様のご説明により、FLExシステムの利点が非常によくわかりました。
日本語で丁寧にご解説いただき誠にありがとうございます。

Cre組み換えが逆戻りしないために二種類のLoxP(黒と白)を用いた場合の図について、お尋ねしたいことがございます。

おそらく2つの白いLoxP間の配列が逆転しているのだと解釈しておりますが、
その後の左側に位置する3連LoxPの順番は左側から「白・黒・白」ではなく、「黒・白・黒」ではないでしょうか。

そうでないと、最後に黒LoxPが残らないと思うのですが、どうでしょうか。
お手数おかけしますが、ご返答いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

某研究者/suishess さんのコメント...

ご指摘ありがとうございます。おっしゃるように白黒が逆ですね。図を差し替えました。