2016年3月7日月曜日

ITは熟練の夢を見るか Dream of IT replacing veteran researchers

クルマ開発、手仕事の先へ 熟練の成功例を数式で一般化(朝日新聞デジタル)


成功例のビッグデータから有用パラメーターを検出→シミュレーションで検証、という流れか。

The article (link) introduced Honda’s trial to reduce veteran engineer and shift to use big-data analysis and simulation.

このような流れは当然医学分野でも起こりつつあり、例えば創薬で、小分子-レセプター結合を構造からシミュレーションして可能性の高い組み合わせを選んでいく、さらには薬効や副作用を探していく、みたいなことができつつある。
ちょうど読んでいた文献で良い例があった [苅谷ら、2016; Amemiya et al. 2015]。このstudyの例では、Sunitinibの副作用の要因について、疎外対象分子とその下流での代謝の動きを代謝経路シミュレーションに入れて導き、酸化・還元型グルタチオン比の減少により肝臓などの臓器障害が引き起こされていることを発見している。

このように、シミュレーション可能なレベルまで情報が蓄積されていれば、重要なパラメーターを大規模に探索し絞り込んでいくような方向性は今後ますます有用とされていくだろう。生物の場合でも、システムとしての生体・生命がもっと正確に理解されシミュレーションの対象となれば、このような流れに進むだろう。もちろん、「なまもの」としてのマテリアルの扱いにくさの問題があるが。

These parameter search from big data to solid simulation will expand not only the engineering but medical science and biology. For example, similar scheme has been used in pharmacological studies, where the responsible metabolic profiles of drug’s side effects were found by metabolic network simulation [Amemiya et al. 2015].

一方で、現時点で多くの開発現場が完全なIT化を利用できるものでもなかろうから、長短のタイムスケールをうまく埋めあわせる必要があるだろう。試行錯誤は「熟練」が必要な部分であり、すぐにニーズがなくなるわけではない。

「熟練」が持つ試行錯誤のスキルが、どの程度このようなアプローチでカバーされていくか?結局はパラメーターサーチと学習プロセスの組み合わせであるから、将来自動化されていく期待もある。工学系は速いだろう。生物実験は??

研究者・開発者個人としては、経験に頼りがちなマインドを「網羅的パラメーターサーチ」にシフトさせる必要性を感じている。

However, well-trained veteran engineer/researchers has a high skill of try-and-error, which needs to develop a novel protocol or device. I think even such skills will be eventually replaced by the IT scheme because they are the combination of parameter search and learning, while there is a time-scale gap between introducing the IT scheme and utilizing the people’s skills. 


References:
苅谷 嘉顕、本間 雅、鈴木 洋史
システム薬理学的アプローチによる薬物副作用メカニズム解析および副作用予測に向けて
日本薬理学雑誌 147: 89-94, 2016

Takahiro Amemiya, Masashi Honma, Yoshiaki Kariya, Samik Ghosh, Hiroaki Kitano, Yoshihisa Kurachi, Ken-ichi Fujita, Yasutsuna Sasaki, Yukio Homma, Darrel R Abernethy, Haruki Kume & Hiroshi Suzuki
npj Systems Biology and Applications 1, Article number: 15005 (2015)
doi:10.1038/npjsba.2015.5

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