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2016年5月2日月曜日

予算申請書の書き方のコツ / Tips of writing a budget proposal



ここ5年くらいで、ずいぶんお金を取るための書類を書く機会が増えましたし、他の人が書いた申請書を読んだり添削したりすることも増えました。内容はもちろんですが、分かりやすく頭にスッと入ってくる文章を書くことが非常に大切だと考えます。

予算申請書の文章を書くときの3か条をまとめてみました。

1) 論理展開を前後させない。立て板に水のように読ませる。
これは論文なども含め、ロジックを人に伝える時の基本です。トレーニングしないと難しい部分です。

2) 不明瞭な指示語を用いない。毎回具体的に。
「あの実験」「この手法」など。どれやねん!と思わせたら負け。

3) 重要な情報は繰り返す。
査読者は短時間でたくさんの申請書を読みますから、途中を読み飛ばしても、疑問を与えないように要所要所で重要な情報を繰り返す必要があります。「他のところに書いてます」は通用しません。



twitterで紹介したところ、ずいぶんレスポンスをいただきましたので、多くの人に納得してもらえる3か条ではないかと思っています。



Three important points that I consider when writing a budget proposal:

1) Explain your logic in a straightforward way. Do not make the reviewer confused on your logic.

2) Do not use unclear reference terms. "that method" "this experiment" ... ok so which??

3) Repeat the important information. Reviewer briefly read your proposal and will not check all of your written words.

Good luck!





2016年3月19日土曜日

細胞内カルシウムと睡眠 Intracellular calcium and sleep



細胞内カルシウム濃度を制御するチャネルやポンプが睡眠の長さを決めるということ(睡眠制御遺伝子であること)を提唱した論文が出ました。睡眠の本質があぶり出されつつあると感じます。

Tatsuki F, Sunagawa GA, Shi S, Susaki EA, Yukinaga H, Perrin D, Sumiyama K, Ukai-Tadenuma M, Fujishima H, Ohno R, Tone D, Ode KL, Matsumoto K, Ueda HR. 
Involvement of Ca2+-dependent hyperpolarization in sleep duration in mammals. 
Neuron 2016 AOP  doi: 10.1016/j.neuron.2016.02.032.

プレスリリースはこちら

This paper proposed the idea that intracellular calcium is involved in animal's sleep time, which may be the essential of this biological function.

Press release in English

「平均的ニューロンモデル」を作成し、睡眠時・覚醒時の神経活動の状態をシミュレーションしました。シミュレーターに組み込まれた分子群を仮想ノックアウトしていくと、上記の分子群が睡眠制御遺伝子候補として引っかかってきました。

だいたいこういう遺伝子は「似た者」がいくつかあるのが通常です。そこで、最近話題のCRISPR技術を使って片っ端からファミリー分子のノックアウトマウスを作製し、表現型解析を行いました。
さらに、胎生致死になってしまう遺伝子については、阻害剤の投与で薬理学的に検証。細胞内カルシウムの流入を抑えると、脳全体で神経活動がupregulateされる(つまり寝にくくなってしまう)ことを示しています。

このような大規模な解析を実現するため、近年開発された「個体レベルのシステム生物学」のための技術が活用されました。一世代でノックアウトマウスの作製が可能なTriple-CRISPRシステム [Sunagawa et al. Cell Reports 2016]、マウスを測定チャンバーに入れるだけで睡眠測定が可能なSSS [同上]、全脳スケールで神経細胞の活動をイメージングし解析するCUBIC [Susaki et al. Cell 2014] などです。これらの技術は既存法のスループットを1オーダー以上改善できるものばかりです。

The idea was examined by simulations of an averaged neuron model and following animal sleep analysis of KO mice of 21 genes (!) and a high throughput and non-invasive sleep analysis system. Upregulated neural activities by inhibiton of Ca channel were observed by whole-brain imaging. These technologies has been developed for 'organism-level systems biology' in mammal.

このような規模の研究は、これらの技術がより普及するにつれ、長期的には一般的なものになっていく可能性があります。

ちなみに、「カルシウムを摂れば不眠に効く!?」みたいな感想がちらほらありますが、これはちょっと違う話です ^^;


Reference :
Susaki EA et al. 
Whole-Brain Imaging with Single-Cell Resolution Using Chemical Cocktails and Computational Analysis. 
Cell 157, 726–739, 2014. 

Sunagawa GA et al.
Mammalian Reverse Genetics without Crossing Reveals Nr3a as a Short-Sleeper Gene.
Cell reports 14, 662-677, 2016.


2016年3月16日水曜日

QPCRのトラブル、夏の幽霊? A trouble in QPCR by summer ghost?



昨年夏のある日、その前日まで動いていた定量PCR (QPCR) が突然動かなくなりました。定量値がテンプレート量と全く相関せず、melting curveを見るとピークが2本。シグナルが意味するところはつまるところコンタミネーション。
「まあ夏だし、こんなこともあるか」と気軽に考えてトラブルシューティングを始めるも、何をやっても回復せず。

結局夏が終わり、秋になっても回復せず。私の夏はQPCRのトラブルシューティングに消えました orz

最近になって、なぜか回復しています。変更したのはmixtureを準備する場所。部屋を変え、クリーンブースを置きました。複数の人が再現よく動かせているので、回復したものとみなしています。

場所の問題? 

とにかく、元の場所で何かを操作する(たとえば、ウェルプレートを取り出す、プライマーを分注する、試薬を開ける)ということをすると、そのロットはたちまちダメになっていたのです。部屋に大量のコンタミ物質が浮いているかのごとく。「夏の幽霊」の正体は結局わからずじまいです。ビルの空調か、はたまた部屋内でマウスを扱っていた影響か(ずいぶん広い部屋なのですが!)。

QPCRはもう10年以上動かしている系ですが、こんなトラブルは初めてでした。メーカーのサポートの方にもずいぶんお世話になりましたが、その方曰く「建物中の部屋でやってもダメで、外でやったら動いたことがありました。」はあ。

謎のコンタミにお困りの方、ご参考にされてください。


In my long career of QPCR experiments, I experienced the biggest trouble in the last summer. One day, suddenly, signal showed a severe contamination and the condition never recovered after numbers of troubleshooting (e.g., changing all the reagents and lot, washing and replacing micropipetter, etc.) among the summer. 
Recently, this comes to the end, apparently due to the reason that we changed the place for preparing the mixture: we moved the room, and set a clean booth with HEPA filter. 

It’s difficult to believe that this was the only reason, but I can’t help thinking the room air had some problems… maybe of the air flow with contamination throughout the building, or animal handling in the same room. But after all, I cannot find out the ‘summer ghost’ bringing the trouble I spent all the summer for. 



2016年3月13日日曜日

その研究を始める前に(2) Criteria for starting the project



ずっと前にこんな記事も書いていますが、その後の経験や議論を踏まえてアップデートしてみました。
(今のラボに移る前ですね。目の前が見通せず、あれこれ悩んでいた時期でした。まあ今も変わりませんが。。。)

  1. Extension: 概念や技術が基盤となり、拡張性・将来性が見込めるか?
  2. Easiness: 概念や技術が容易に再現され広がりうるか?
  3. Replacement: 既存の概念や技術を刷新できるか?
  4. Competition: 他の概念、技術が代替しないか、あるいはより優れていないか?

アイデアにcommitするかどうかを決める目安として最近考えている4項目でした。



2010年3月15日月曜日

その研究を始める前に

vikingさんのブログより、一部引用。

===

だからその論文はリジェクトされる

  (途中略)

では、最後のまとめとして「リジェクトされない論文を書くには」・・・

   1. まずそもそも研究に着手する前に、総説が1本書けるぐらい

   先行研究をサーベイする
   2. まずそもそも実験をする前に、実験計画に過不足がないよう

   じっくりプランを練る
   3. まずそもそも解析をする前に、解析手法の原理をきちんと勉強する
   4. まずそもそも論文を書く前に、有意であるべき統計値が有意になる
   ようにロジックを考える

 (後略)

===

ついつい準備不足で手を突っ込んでしまう傾向があるので、自戒を込めて。

2010年2月25日木曜日

「今日も狂ったように仕事したなぁ」

と言って帰宅の途に就くのが理想。

<仮説検証型の人は生産性が高い-
     圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル>

より、一部引用。

===

アメリカで研究するようになって最も驚いたことの一つは、日本では考えられないほど生産性の高い研究者が存在することだ。

たとえば僕がローテーションして、最後までそこでdissertation work(博士論文のための研究、活動)をすることにするか迷っていたあるラボ。そこはポスドク、テクニシャンを含めて(註:undergraduate=学部生は殆どアメリカの研究室には居ない)たった5人でやっているにもかかわらず、毎年5-6本ぐらいはペーパーを出し、ほぼ全て一流紙。多いときは年に2本ネイチャーに出し,一本は表紙になったりしていた(#)。

しかも良く日本では見かける深夜も土日も働いて、朝はどちらかというと崩れ気味、みたいな重労働系の生活ではなく、普通に朝来て、「うーん今日は狂ったように仕事をしたな」とかいって七時半ぐらいに帰る。遅くても9時ぐらいかな。週末は飼っている細胞にえさをやりに来たり、続き上必要なミニマムなしごとをするぐらい。

(中略)

この辺、いったい何がどう違うんだろう?と思って見てみると、これがもうびっくり。ほとんど僕が長い間つとめてきた経営コンサルティングファームで行われている仕事のやり方とほとんど同じなのだ。(中略)

特徴的なところを挙げてみる。
(タイトルのみ抜粋)
1. まずイシューありき
2. 仮説ドリブン
3. アウトプットドリブン
4. メッセージドリブン

===


これ、以前指導を受けたK先生のやり方そのもの。
最初に最後のFigの実験をして、その論文の結論を出してしまう。

Questionの設定は、これと別の「発想」のレベルで行う必要があるけどね。