濱口秀司さんは、かつてUSBフラッシュメモリの開発などを進めた、先進的なアイデアの持ち主です。twitterの発言などを参照していると、機智に富む発想のヒントがたくさんあり、勉強させていただいています。
creative thinkerという肩書きがかっこいい^^
ハーバードビジネスレビューの最新号(2016年4月号)に、彼のまとまった文章が載るというので購入。イノベーションをどう生み出すか、ということについてページを割いて説明されています。
「デザイン思考」という言葉を仕事で一切使った事がないのですが、ハーバードビジネスレビュー4月号にデザイン思考について思うことを正直に書いてみました。(デザイン思考ファンやデザイン会社信者に刺されるかも) pic.twitter.com/ayLoJ781DD— Hideshi Hamaguchi (@hideshione) 2016年3月10日
中でも、「専門家が陥りがちなバイアス」を探すという点に共感します。バイアスを探すため、まず専門家の思考フレームを把握し、そのフレームワークからバイアスを見つける方針を紹介していますが、実に実用的な思考方法だと思います。バイアスを破壊するアイデアを探し、そこにニーズがあれば、それは社会を変えるイノベーションとなりうるでしょう。
A-Bの延長線上にあるCではなく、そのバイアスを外れたDを生み出すことが重要です。
アイデアは、
1) 聞いたことがないもの
2) 実行可能なもの
3) 議論を生むもの(一定の批判が出るもの)
を満たすものであることが重要と説明されています。加えるとすれば、
4) 基盤/標準となりうるもの
という点も、アイデアの重要性を評価する軸として大事だと思います。
これらの指摘は、自分のこれまでの仕事と照らしわせても実感できるものです。
マウスの遺伝学的実験を高速化しようというプロジェクトを進めたことがあります。自分は元々マウス遺伝学を学んできた人間(専門家)でしたので、「遺伝子改変マウスは交配させて作出・維持するもの」(バイアス)という考えしか持っていなかったのですが、多数の改変マウスを短期間で作る枠組みをつくりたい(ニーズ)となった時、交配を介さないでES細胞/受精卵から直接解析個体を作るというアイデアを実現させる取り組みを始めました。
そのような方法で遺伝子改変マウスの実験を進めているラボは今でもほとんどないと思いますが、そういう目で調べてみると意外に要素技術があるもので(実行可能)、実際に毎週数系統の遺伝子改変マウスが恒常的に作られ、数ヶ月のオーダーで解析が回る体制が最終的に動くようになりました。
このようなスキームは、今後標準的なものになっていくだろうと自分たちは考えています。